カーボンファイバー弓

カーボンファイバー弓

ファイバー弓制作にあたり

一萃弓、吟翠弓、大変多くの方々に高い評価、厚いご支持を戴いております事、厚く御礼申し上げます。 弓道界も国際化の動きが顕著になっており、この時流をしっかり受け止め、適切な対応をすべき時と存じます。 しかしながら、外国の皆様に竹弓を薦めるにはメンテナンスの面で大きな不安があります。しかも、この事に関しての解決策のないことを考えるとき、メンテナンスに優れたファイバー弓の製作は是非必要と判断した次第です。
 かつて、ファイバー弓を製作した時期がありました。当時はさほどの必要性も使命感も感じられず、二年余りで一萃弓、吟翠弓製作に専念し今日に至りました。思えば、そのファイバー弓の製作技術を竹弓にも活用したことが、今日の一萃弓、吟翠弓の性能向上に、大きな力となりました事は否めない事実であります。
 高校生、大学生の皆さんの多くは竹弓の感触を知らないまま、弓道を離れ、あるいは、中断することが通常であります。 当方のファイバー弓は、肩味、とくに「離れ」の感触が非常にソフトですから、射技において竹弓との違和感は感じさせません。 これは大変重要なことで、竹弓の感触を知って戴くことに繋がり、将来、竹弓を使用する際も無理なくスムーズに切り替えることが出来る礎になるかと存じます。
 伝統の竹弓製作の技術、以前のファイバー弓製作の経験をさらに研鑽、活用し、微力ながら弓道界の発展に寄与できますれば、この上ない喜びで御座います。

ファイバー弓制作から思うこと

 当方製作のファイバー弓を、既にお使い戴いている方、興味をお持ちの方々からの、ご感想、ご意見、心意気が伝わって参り、ファイバー弓製作の意義の重さを感じるとともに、踏み切って大変良かったと思っております。 今日まで竹弓のこと、端的に申せば竹弓を使用されている方のみの弓作りをさせて戴きましたので、もう一つの世界に踏み出すような戸惑いの気持ちも少なからずありました。
 ファイバー弓を作り、改めて感じますのは、大変真面目で礼節を重んじ、規律を守る、謙虚な方々が大変に多い弓道界には、武道精神においても竹弓、ファイバー弓の意識の垣根が無いことでした。今は、大いに反省しているところです。ファイバー弓は竹弓に移行する準備段階との意識も根底に有りましたので、反省の上に立ってなおさらに真剣に対処していくべきかと思う次第です。
 ファイバー弓はメンテナンスに優れているのが一番の利点であります。 しかし、乱暴に扱っては故障を招くことになります。しかもファイバー弓の故障は修理は不可能な場合が殆どですから、故障を起こさないような取扱や使用が大事です。
 竹弓は弦の張り方の巧拙で弓の育ちが全く違います。ファイバー弓の取扱も竹弓に準じた取扱方法を身につける事は将来のためにも意義があり大切であります。 当方ページ、弓の心得の項の1、弦の張り方、外し方は是非実践して戴きたいことです。それだけでも竹弓への移行はスムーズになり、加えて弓の負担を軽くするため柔らかい十文字の手の内に改善し、一歩向上した質の高い行射をするための練習を重ねて行えば、あとは慣れるだけです。確かにファイバー弓から弓道に入った方は笄が出やすい傾向がありますから、反動の少ない、肩味のソフトなファイバー弓なら、柔らかい十文字の手の内に改善するのは難しいことではありませんから、即、竹弓に対応可能ということにもなろうかと思います。
 竹弓、ファイバー弓に関わらず、大変重要なことに弓把の高さがありますが、弓具店からの購入の場合は、弦と上関板の間隔を2ミリから5ミリの範囲で適正弓把を知って対処して下さい。 弓具店の個々の作品についての把握は、当方では不可能ですから、弓具店の技量と知識をご利用戴くことになりますが、最小限、次の事を守って戴きたいと思っております。

1、 上関板の弦との間隔は2ミリから5ミリを保つ。

2、 中関はややキツメに作り、矢の筈溝を筈こぼれしにくいように、奥に膨らみを持たせ、奥行きも深めになるよう加工する。筈こぼれによる、カラ筈は破損に繋がります。中関作りは大事です。

3、 軽すぎる矢の使用は故障、破損の原因になります。弓力に適した重量の矢をお使いください。適正組み合わせはホームページ、弓の心得の項、2、弓力に見合った矢の重さとは?をご覧下さい。

ファイバー弓は決して丈夫ではない面もあります。全面塗ってありますから竹弓より傷がつきやすいですから、丁寧に扱って戴きたいと思います。 特に上関板の弦が打つところは弦跡が必ず付きますから、次の加工をすると大変効果があります。竹弓も同様の効果があります。 透明の18ミリのビニールテープを用意します。18ミリ×5ミリに3枚切って上関板下端に横長に貼り重ねます。関板上面から左右少しずつはみ出しますから、押さえに18ミリのまま外竹側の両方に2ミリほど(外竹側の一部は貼らない)掛かる位に1枚貼り回します。つごう4枚を貼り重ねます。
3百射毎位で貼りかえれば関板が凹む事もなく弦も傷みません。勿論弦子には全く悪影響はありません。セロテープでは薄い上にかえって汚くなります。
弓が持つ本来の性能を発揮し、しかも長く維持させるには正しい使い方が肝要でありますこと、ご理解戴きますれば幸いで御座います。

 

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