はじめに

和弓の性能を十分に発揮するには、正しい使い方・手入れ方法を知っておくことが大切です。近年、在庫を置いて、枯れた弓を販売する伝統的な販売形態の弓具店が非常に少なくなり、手入れ技術も劣ってきたのが現状です。   当方は枯れた弓を弓具店に出荷することは殆どございませんので、在庫の多いところほど枯れて安定した弓が置いてあるということになります。  こうした状況を踏まえ、「自分の弓は自分で守る・育てる」、つまり弓士の皆様御自身が基本的な手入れ技術を会得することが最善であるとともに必要不可欠であります。  弓具店で枯れた作品を購入されても、少なくても一夏を越すまでは、育てる意識を持つことが必要であり、使い方・手入れ方法に不備があったら決して良い弓には仕上がりません。弓にとって最も過酷な季節の、梅雨から夏場を上手に過ごさせることが良い弓に仕上げる決め手になります。  行射においても弓、矢、弦はお互いに影響し合っており、不備があれば何らかの支障をきたします。なかでも弦は弓に対して大きな影響力を持っていますので、弦の特性を理解したうえで使用していただきたいと思っております。  弓は本来、店頭にあるうちは完成品とは言えず、自ら使いながら序々に完成品に育て上げるものです。  上記のような考えにもとづいて、この項では、弦の張り・外し方から、基本的な手入れ方法、弓と弦の特性など、最良の弓に育てるために弓士が知っておきたい知識をQ&A方式で紹介してあります。重複個所は特に重要なこととご理解いただきまして、ご自身の弓のメンテナンスにお役立て下さい。

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