新弓の取り扱いと育て方

Q3.新弓を購入しました。取り扱いで注意すべき点は?

  弓師は、名弓になる素質を持った弓を作ることに最善を尽くします。完成品に育て上げるのは弓士の皆様御自身であり、「使いながら育てる」という意識と気配りをしていただくことが最も大切であります。名弓に育て上げるコツは、頻繁に弓を見、微小な狂いになるべく早く気づき、矯正することです。   特に新弓のうちは一射ごとに弓形を点検することが大切で、何回も見ることで弓の良否を見分ける目が養われます。  以下、新弓を購入された後、やっていただきたいこと、留意していただきたいことを列記します。 *ご購入の際、弦は必ず張ったままお持ち帰りいただき、十分使い込むまで張りっぱなしでお使い下さい。

弓型を紙に写す

  新弓を手にされたら、先ず成型を長い紙に写して下さい。上下の成りのバランス、弦の通り、弦の結び目の位置をよく覚えて下さい。上下の弦の結び目の位置は重要で、その弓に合った正しい位置があり、入手された時に印を付けておくと良いでしょう(結び目は、多くの場合中心よりやや左側です)。弦の通りは脳裏に刻んでしっかりと覚え込んで下さい。

合成弦から、麻弦に張り替える

 お買い上げの時の弓は、合成弦が張ってあるのが普通です。しばらくはそのままお使いいただき、使い込んで安定したころ、弓力にあった太さの麻弦に替えることをお勧めします。合成弦と違う柔らかい離れの感触と、冴えた弦音、肩味を味わえると思います。  麻弦は、高価で合成弦のように長持ちはしないものの、離れの衝撃を和らげ、弓の負担を軽減する大変意味のある性能を持っております。笄(こうがい)を大幅に減少させ、そして、空筈を引いても反転を防ぎ、万一、反転しても切れて首折れになるのを防ぎます。

張ってすぐ使用しない

  弦を張ってすぐ使用しないで下さい。張ったら必ず上下の弦輪が、その弓に合った適切な箇所にあるかを確かめ、弦がかり、弦の高さ、張り顔を調整し、しばらく置き、(捻りが加わらないように)先手の虎口を開いた状態で、矢束八分目くらいの素引きを2~3回行った後、巻き藁および的前に向かいます。目一杯の素引きは百害あって一利なしです。

車内に放置しない

  車の中は、夏場は70℃にもなることがあり、接着面の剥離を起こすことになり、弦を張ったまま高温に放置すると、捩れが生じ、弓力が落ちる原因にもなります。また弦を外してある場合は裏反りが深くなり、普通の張り方では胴が抜けることがあります。もし高温下にさらした場合、風通しの良い、涼しい所に置き、胴、握りに負担の掛からないように弦を張り、型調整をした後、十分時間をおいて使用して下さい。

安定期にかけて保管する

  弦を張っておく時には、安定器に掛け、特に高温時には弦が左右に動かぬよう紐で結んで置くようにします。安定器は必ず弦を手前にして弓の左側からつけるようにします(右側から掛けたのでは意味がありません)。

弓形を整えてから行射する

  名弓に仕上げるには、張り方が最も重要です。弦を掛ける時には、必要以上に押さず、イリキ過ぎる弓を除き、左に倒し、そこから下方に押して弦をかけてください。張ったら必ず本来の正しい形に整えてから、行射されるように心がけて下さい。

その他

  細身に仕上げてある弓については、内竹・外竹ともに弓の働き、矢業(やわざ)を考え、相応に仕上げてあります。外竹を替える修理は弓の性能が狂うことになりますので、修理は致しかねる場合もあります。  三か所籐は、五か所巻きの弓に格式において劣ることは決してなく、伝統の正式な巻き方であります。日本弓は全体の調和を考え、黄金比率により上下の配分がなされていることをご勘案下さい。

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